A&D/Wについて
◆七輪囲炉裏へのおもい
◆A&D/Wの意味
◆なぜ組立式&分解式なのか、そのこだわり
◆なぜオノオレカンバ材を使用するのか
◆製作職人について
◆七輪囲炉裏へのおもい
父は、休日になると七輪でこじんまりとバーベキューを楽しむのが好きでした。
いつも重そうな囲炉裏を引っ張り出しては七輪をセットし、一杯やっていました。
家の中で食べればなんでもない——
それなのに「塩味のじゃがいも」が、なぜあんなに美味しかったのか。
いまでも不思議でたまらない記憶があります。
囲炉裏の前にたたずむ、大きな背中。
職人だった父の、ゴツゴツとした少し汚れた手で炭を起こす姿。
素手で網を触るその様子。
無骨で、ただただかっこよかった。
たまに、何かを想うように、静かに焼いていたこともありました。
やがて私も父となり、
炭を眺めながら、七輪で炙りながら、
家族のこと、仕事のこと、人生のことをぼんやり考えるようになりました。
頑張っている自分をちょっと褒めてみたり、
まだまだ未熟な自分に反省したり、
かかわっている人たちに感謝したり——
そんな時間が、心を癒し、
素直な気持ちにリセットさせてくれるのです。
父が生前よく言っていた言葉を、ふと思い出します。
「この木の特性を活かして、なにか新しい家具が作れないだろうか」
その木材も、仕入れてから30年が経ちました。
天然乾燥を経て、落ち着き、反りの少ない優良材へと育ちました。
岩手県産木材、斧折樺(オノオレカンバ)材です。
30年ほど前の思い出と、父の想いと。
共に成長してきたオノオレカンバ材でつくる七輪囲炉裏。
使い込むほどに、それはやがて自分とひとつになり、相棒となり、
家族の思い出の道具のひとつになっていく——
七輪囲炉裏には、自然と家族が集い、
みんなを幸せにする力があります。
分解すれば、コンパクトなサイズに。
ガーデン、バルコニー、ベランダ、キャンプなど、
あらゆる場所に持ち出して使っていただけます。
少しお洒落な円居(まどい)の空間をつくってほしい。
そして、ほんの少しの贅沢と、ゆとりを感じてほしい。
そんな想いを込めて、つくった家具です。
◆A&D/Wの意味
「南部箪笥(NANBU-TANSU)」「ダイニング火鉢(HIBACHI DINING)」に続く、新たなブランドとして誕生しました。
岩手県指定伝統工芸品である「南部箪笥」のアイデンティティを受け継ぎ、
その製作で培った指物技術を惜しみなく活かした、組立・分解が可能なアウトドア家具シリーズです。
指物技術とはボルトや釘などの金具類を使わずに、部材同士を緻密に組み合わせて接合する日本の伝統技法です。
精巧な仕口(しぐち)やクサビなどを用いて、強度と美しさを両立させるのが特徴です。
A▶Assembly(組立)
D▶Disassembly(分解)
W▶Wedge(クサビ)
クサビ接合をはじめとした指物の技術によって、
分解できて、また組み立てられる家具を実現しました。
また、南部箪笥やダイニング火鉢などの高級家具が持つ風合いや質感をそのままに、
作品に触れていただきたいという想いも込めて——
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A ▶ Affluent(ゆとり、豊かさ)
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D ▶ Deluxe(贅沢)
~ゆとりを育む、指物技という贅沢~
~ちょっとの贅沢から生まれる、心のゆとり~
このような意味も、A&D/Wには込められています。
◆なぜ組立式&分解式なのか、そのこだわり
A&D/Wの8つのこだわり
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~接合に金具を使わない~
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~ボルトやネジを使わない~
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~部材の接合に接着剤を使わない~
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~指物技術による接合だけを採用~
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~工具を使わず、人の手だけで組立・分解ができる~
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~分解すればコンパクトになり、持ち運びが簡単~
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~分解できるからこそ、部材のお手入れやメンテナンスがしやすい~
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~屋内でも屋外でも使える家具であること~
この“こだわり”を貫き通し、ひとつひとつの作品に丁寧に落とし込んでいます。
◆なぜ、「組立&分解式」なのか?
家具には、主に3つの構造があります。
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一体構造
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折りたたみ式
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組立&分解式
一体構造の長所は、デザインの自由度が高く、重厚感や存在感を演出できること。
折りたたみ式の長所は、軽量で、スピーディーにセッティングできること。
それぞれに良さがあります。
その中で、組立&分解式の最大の魅力は、
なんといっても——
「お手入れや修理のしやすさ」
です。
家具を屋外で使用する際、気になるのが「汚れ」や「食べかす」などが細部にこびりついてしまう可能性です。
使い方によっては、気がついたときには目を背けたくなるような汚れがついてしまっていることもあります。
たとえば、折りたたみ式の家具を屋外で使用した場合、
接合部のボルトやネジなどの金具まわりや、部材の隙間など——
どうしても手が届かず、汚れが残ってしまう箇所が出てきます。
その点、組立&分解式であれば、
一つひとつの部材を完全に分離することができるため、全体の表面をしっかり拭き取ることができます。
いつでも清潔な状態を保てるという点でも、衛生的に安心です。
また、傷や破損があった場合、もしご自身で修理できる範囲であればそのまま対応できますが、
メーカーに修理を依頼する場合は通常、製品全体を送る必要があり、配送料も高額になりがちです。
ですが組立&分解式であれば、該当の部材1点のみを送ることが可能なので、送料も抑えることができます。
弊社工場にお送りいただければ、修理やメンテナンスにも対応いたします。
◆なぜオノオレカンバ材を使用するのか
堅い木材は薄くスリムに加工することが可能です。
薄くてもスリムでも、繊細な指物技による接合部の強度を損なうことなく製作できます。
逆に、硬くない木材を薄くしたりスリムにすると、繊細な指物技の接合部の強度が弱くなり、
欠けたり壊れたりするリスクが増します。
その場合、部材を厚くしたり、頑丈な断面にすることで強度を確保できますが、
重量が増し、デザインがスッキリしなくなります。
確かに鉄で作れば、もっとスリムで軽量にできますが、
私たちのコンセプトは、温もりある木材と金具を使わない技術です。
そのため、オノオレカンバ材のような堅い木材を使用することで、
デザイン性と性能のバランスが取れた、優れた作品が生まれます。
また、木材は生き物であり、どんな木でも多少の反りが発生します。
ですが、オノオレカンバ材はその堅さゆえに、反りの度合いが非常に低く、
非常に安定感が高いという特長があります。
さらに、弊社で使用している岩手県産のオノオレカンバ材は、先代が約30年前に仕入れ、
長期間天然乾燥された優良木材です。このため、落ち着きのある木と言えます。
このような希少で優れたオノオレカンバ材を使用することで、
より優れた使用感が得られるのです。
オノオレカンバは、樹高15メートル前後、直径40センチ程度のカバノキ科の落葉高木です。
主に東北地方の太平洋側に多く生息しています。
標高500メートル以上の山肌に根を張り、幹が1ミリ太くなるのに3年かかるという、成長の遅い木です。
樹齢300年以上でようやく直径40cmほどに成長し、その分非常に堅い木です。
名前の由来は、**「斧が折れるほど堅い」**ことから来ており、
比重は0.9~0.94で、部位によっては水に浮かべても沈まないほどの密度を誇ります。
オノオレカンバは、自然林の中でも数が少なく、成長が遅いため、植林がほとんど行われておらず、
非常に貴重な木材とされています。
弊社が所有する貴重なオノオレカンバ材は約10m³と限られており、
その限られた資源を大切に、思いを込めて製作した七輪囲炉裏をはじめとするA&D/Wの家具で、
多くの家族の思い出を作り、親子代々末永く使っていただきたいと願っております。
<補足>
また、ウレタン塗装を施すことにより、さらに反りの防止が強化されます。
数日間のキャンピングで紫外線に当たっても、直ちに劣化することはなく、
屋内外で併用して使う家具としては、最も耐久性に優れています。
【オノオレカンバ材の素材力】
◆製作職人について
マルイ造形家具工業 代表取締役(3代目)
千葉暢威(1977年まれ)
南部箪笥、民芸家具の製作職人
宝塚造形芸術大学を卒業後、2000年から、職人である父の弟子になる。
祖父と父から家具製作技術を学び、木工、塗装、デザイン等を行う。
好きなこと:ホームセンターで一日過ごすこと、キャンプ&バーベキュー、釣り
好きな言葉:行動すれば夢が叶う